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『新編民藝四十年』
柳宗悦/著 筑摩書房 2023年
1958年に刊行された『民藝四十年』に、17本の論考を追加し再構成したもの。 「民藝」とは民衆的工芸を意味しており、一般の民衆が日常的に使う食器、家具、衣服などの調度品が対象であるが、それらは「用途を誠実に考えた健全なものでなければならない」「日用品だからといって粗悪であってはならない」と柳は説く。民藝に関する考え方のほか、朝鮮美術、陶磁器、茶道など様々な分野に対する彼の美学に触れることができる。
『日本の色を染める』
吉岡幸雄/著 岩波書店 2002年
京都の老舗染物屋の五代目当主である著者が、古代の文献を元に日本における染色の歴史をまとめている。茜、梔子、蓼藍、紫草など様々な植物から色を取り出し、衣服などに利用してきた様子や、染織技術の伝来、各時代を象徴する色などを解き明かしている。化学染料とは違い、自然から美しい色を引き出すには手間と時間がかかる。先人たちの努力や技術を忘れず、その「色」「彩」をしっかりと眼に記憶したいと吉岡は語る。
『やきものの鑑賞』
秦 秀雄/著 平凡社 1999年
古美術愛好家が集う「落穂会」を主宰した著者が、陶磁器などの古美術や骨董を鑑賞する上で自身が何を重視するかを語るエッセイ。お茶を飲む湯飲みも、花を活ける器も、価格や他者の評価ではなく自分が気に入ったものを信じることや、好きだと目に飛び込んできたら素直にこれを受け止めることが人生を豊かにすると説く。出先で偶然出会った安物の器の中にも、思わぬ佳品を見つける目を見習いたいものだ。
『世界の民芸玩具』
尾崎織女/著 高見知香/写真 大福書林 2020年
日本玩具博物館が所蔵するコレクションの中から、世界各地の民族色豊かな玩具を紹介する本。単なるおもちゃだけではなく、信仰や祈祷に用いられていたものなども紹介する。全体的に原色を使ったものが多く、土や植物などその土地ならではの素材、工業製品ではない手作り感、土着民族の生活に根ざしていることが興味深い。各民族独自の美意識と玩具に込められたメッセージ性の高さは、「民芸玩具」と呼ぶにふさわしい。
『江戸の手しごと』
「nid」編集部/編 エフジー武蔵 2017年
東京には、伝統的な柄の組み合わせが美しい江戸切子、繊細な模様を染め上げる江戸小紋、釘を使わず木を組み合わせる江戸指物など、伝統工芸品が数多くある。また、扇子や団扇、手ぬぐいや足袋など、粋なデザインで生活に役立つ昔ながらの手仕事品が多い。この本では、伝統を受け継ぐ職人たちの手から生み出される逸品の数々を紹介されている。小粋なアイテムを求めて、ものづくりの現場を訪ねてみたくなる1冊だ。
『日本のコスチュームジュエリー史』
田中元子/著 繊研新聞社 2023年
貴石や貴金属を用いた高価な宝飾品とは一線を画す、普段使いのアクセサリー=コスチュームジュエリー。第二次世界大戦以降の経済発展とともに身近になったファッションアイテムを、豊富な図版で紹介する。流行の移り変わりや技術の進化で、プラスチック、陶器、合皮など使用される素材やデザインが刻々と変化していく様子がよくわかる。一過性の装身具ならではのポテンシャルを感じさせる本だ。
『猫つぐらの作り方』
誠文堂新光社/編 誠文堂新光社 2016年
「猫つぐら」は雪深い長野県栄村で冬場に作られる伝統工芸品で、保温性の高い稲藁を「かまくら」のような形に手で編んだもの。農作物をネズミから守ってくれる大切な猫のために作られ、狭くて暖かいところが大好きな猫が好んで入るそうだが、生産数が少なく注文しても予約待ちだとか。村随一の名人による編み方指南とともに、つぐらで寛ぐ猫たちの写真が多数掲載されていて、写真集としても楽しめる。
『東京職人』
Beretta P-05/著 雷鳥社 2015年
村山大島紬、東京打刃物、江戸更紗など、東京都の指定伝統工芸品の技術を守る職人たちの姿を映した写真集。打刃物職人である石塚洋一郎氏が言うように、「本物を愛する人は決していなくならない」という思いはどの人にも共通であり、ものを作る際の眼差しや工具を扱う手元の様子からも、伝統を守る者としての矜持が感じられる。彼らが生み出す工芸品を手に取りたい、使ってみたいと思わせる迫力のある写真ばかりだ。
『こけし図譜』
佐々木一澄/絵と文 誠文堂新光社 2020年
「こけし」は主に東北地方で作られている民芸品。「キナキナ」という無彩の赤ん坊のおしゃぶりが転化した岩手・南部系こけしや、平らな頭頂と裾すぼまりの細い胴が特徴の宮城・作並系など、一口にこけしと言っても地方によって造形に驚くほど違いがある。こけしのフォルムや大きさ、彩色方法などをイラストで比較することができる。また、各地のこけし工人へのインタビューも掲載され、こけしの魅力に迫っている。