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小説

  椎名氏の初めての小説『ラジャダムナン・キック』は、中央公論社の『海』に掲載された。その後の小説作品の系譜には、椎名氏自身が述べている通り「明るい私小説」と「SFに近い超常小説系のもの」という二つの大きな流れがある。
  私小説の代表作としては、あまりに著名な『岳物語』、『犬の系譜』、『哀愁の町に霧が降るのだ』とそれに続く『新橋から烏森青春篇』、『銀座のカラス』、『本の雑誌血風録』などがある。また“超常小説”の代表作としては、『ねじのかいてん』、「SF三部作」と呼ばれる『アド・バード』、『水域』、『武装島田倉庫』等が挙げられるであろう。  世界を駆ける旅と旅の間に書き上げられた多数の小説作品には、日常の微細な部分から広大な世界へ、そしてまたその逆へと行き来する飛躍があり楽しい。
画像:岳物語

『岳物語』

椎名誠  集英社 1985

 シーナ家の一人息子(ということになっている)岳くんの、保育園から中学入学までの時期を題材とした私小説。著者は「オヤバカをベースにした、男たちの友情物語」と言っているように、アウトドアが大好きな父と野田知佑氏をはじめとする父の友人たちの中で、釣りやカヌーなどを通して自然の厳しさを体験したくましく成長し自立していく様が、父親の目線から悲喜こもごも描かれている。「浦安」にハゼ釣りに来た、といった記述もあり市民として親しみを感じる。  なお、正続編を合わせ再編集した『定本岳物語』1998がある。

画像:犬の系譜

『犬の系譜』

椎名誠 講談社 1988

 物心つくころには既に家にいたパチ。パチの死後に兄がもらってきて、母の外出の後をついていったあと行方不明になったジョン。ジョンの後にきたチヨ。三匹の犬との出会いと別れや父の死、未亡人となった母や兄弟、叔父、友人のことなど身の回りにおきた出来事や育った袖ヶ浦の自然が生き生きとした描写が綴られている椎名誠の幼少期から小学校高学年にかけての自伝的小説である。

画像:黄金時代

『黄金時代』

椎名誠 文藝春秋 1998

 主人公は中学三年生の時に突如、決闘を申し込まれて集団暴行にあい、喧嘩に負ける。それを切っ掛けに友達と一緒に親戚に喧嘩の仕方を教わり始め、夏祭りの日に暴行された番長に復讐をする。その後、教わった喧嘩の流儀で集団暴行からも上手く逃れられるようになり、高校、写真大学と進学をし、実家を離れて叔父と生活をし始める。この間の主人公の成長過程を軸に繰り広げられる青春小説

画像:アド・バード

『アド・バード』

椎名誠 集英社 1990

 マサルと菊丸は父を探しにマザーK市にむかった。その街には2大勢力の争いがあり、宣伝用に加工された鳥や虫などを使った広告でしのぎを削っていたが、宣伝が過激化するにつれて次第に制御不能な荒廃した世界になってしまった。攻撃力を持った危険で奇妙な虫や動物、そしてアンドロイドなどに出会いながら兄弟二人は果たして父と出会うことが出来るであろうか。そして父の安否は? 日本SF大賞受賞作。

画像:中国の鳥人

『中国の鳥人』

椎名誠 新潮社 1993

 商談のために中国の奥地にやって来た主人公。思わぬ足止めで、とある村に留まることになった。そこで見たのは背中に巨大な羽根のようなものをつけて空を飛ぶ人間だった。  著者が以前見た夢をもとに書いた『中国の鳥人』のほか、日々のちょっとしたことをヒントに生まれたという短編小説がまとめられている。『月下の騎馬清掃団』『思うがままの人生』『ちくわ』など全8編を収録。

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