浦安市立図書館：感染症

フィクションの中の「感染症」

　古今東西様々なジャンルの文学作品に「感染症」は描かれています。感染症に翻弄される人々の姿は、普遍的なテーマとして私たちに語り掛けます。

「流行感冒」　『小僧の神様』より

志賀直哉／作　岩波文庫　2002年

　およそ100年前の大正時代、世界各地でスペイン風邪が流行した当時の日本の様子を題材にした小説です。
　語り手である「私」は、感染拡大防止策として、妻と女中に外出自粛を要請し、人と長く話し込まないように強く言いつけていました。しかし、女中の「石」が嘘をついて芝居を見に行っていたことが発覚します。
　当時の人々の感染症対策や感染経路などが、新型コロナウイルスが流行している現代と重なります。

　主人公は明治時代に21歳で肺結核によりこの世を去った青年教師をモデルにしています。現代とは異なり、当時肺結核は不治の感染症でした。
　国を挙げて日露戦争への機運が高まる中、肺を病み、死に向かっていく主人公の若さゆえの揺れやすい心、人と比べることで生まれる焦燥感、あるものではなく、ないものばかりを数えてしまうことで生まれる虚無感など、人が一度は味わったことのある繊細な心の機微が、田舎の情景とともに描かれた切なくも美しい作品です。

『赤死病』

ジャック・ロンドン／著　新樹社　2010年

　冒頭に登場するのは、過去を懐かしむ老人とそれを理解できない少年たち。世代間ギャップの原因は、約60年前に猛威を振るった「赤死病」でした。この「赤死病」禍をくぐり抜けた老人が、ウイルスに翻弄される人々の姿を少年たちに語り聞かせます。
　「はかなきもの、あわのごとくついえ去り」。1912年に雑誌に掲載された本作は、これまで築き上げてきた文明が目に見えないウイルスにより破壊される様を、100年後である2013年の出来事として、予言のごとく描きます。

フィクションの中の「感染症」

「流行感冒」　『小僧の神様』より

志賀直哉／作　岩波文庫　2002年

『田舎教師』

田山　花袋／著　岩波文庫　2018年

『赤死病』

ジャック・ロンドン／著　新樹社　2010年

フィクションの中の「感染症」

「流行感冒」 『小僧の神様』より

志賀直哉／作 岩波文庫 2002年

『田舎教師』

田山 花袋／著 岩波文庫 2018年

『赤死病』

ジャック・ロンドン／著 新樹社 2010年

「流行感冒」　『小僧の神様』より

志賀直哉／作　岩波文庫　2002年

田山　花袋／著　岩波文庫　2018年

ジャック・ロンドン／著　新樹社　2010年