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略歴・デビュー作

 主人公が不思議な世界に旅に出たり、空を飛んだりという現実には不可能な空想
を楽しむことができるのが、ファンタジーです。けれども、“非現実の世界”
だからこそ「そんなことありえない、でも、もしかしたら・・・」という真実味が
感じられなければ楽しめません。
 別世界に入り込む物語の導入がしっかりと描かれていたり、現実の世界に不思議な
存在が違和感なく登場する物語は、ファンタジーを読み始めた初心者にも、比較的
入りやすい作品と言えるでしょう。
 ピアスの『トムは真夜中の庭で』では、不思議な少女との交流が丹念に描かれ、
主人公と読者を時を超えた世界に旅立たせてくれます。佐藤さとるの『だれも知ら
ない小さな国』では、“ぼく”が経験した話として語ることで、本当にあった出来
事かも、と思わせる不思議なリアリティがあります。

まずは、日常という舞台に不思議なことが混在する面白さを楽しんで、 ファンタジーの扉を開けてみましょう。

『だれも知らない小さな国』 
佐藤さとる作 講談社
 ぼくが小学校の三年生だった夏、「もちの木」を探しに行った峠の近くで、小山に隠れた三角形の平地を見つける。そこは、きれいな泉がある不思議な場所だった。その秘密の小山を訪ねるようになったぼくは、あるおばあさんからそこに住んでいた「こぼしさま」という小さい人の話を聞いた。そして大人になったぼくが出会ったものは・・・ 日本に言い伝えのある、コロボックルという小人の物語。1959年に私家版が作られて以降、読み継がれてきた日本のファンタジー。五巻あるシリーズの一作目。
『床下の小人たち』 
メアリー・ノートン作 林容吉訳 岩波書店
 メイおばさんが話してくれたのは、自分の弟が見たという、古い家の床下に住んでいた小人たちの物語。その小人は両親と娘のアリエッティの3人家族で、生活に必要なものは、すべて人間から「借りて」いた。壁紙は古手紙、タンスはマッチ箱。決して人間に見られてはいけない決まりだったのに、見つかってしまう。アリエッティと、男の子(おばさんの弟)の間に生まれた交流は、あってはならないものだった。 続編に『野に出た小人たち』等がある。人間そっくりで、魔法の力を持たない小人たちの暮らしを、ミニチュアの世界としてリアルに描き、ファンタジーに新しい展開を見せた。カーネギー賞受賞。
『トムは真夜中の庭で』 
フィリパ・ピアス作 高杉一郎訳 岩波書店
 親戚の家に預けられ、一人で退屈な夏休みを過ごしていたトムは、真夜中、お屋敷の大時計が十三時を打つのを聞く。寝室を抜け出し、裏口のドアを開けると、月の光に照らされた庭園が広がっていた。あくる朝、トムが確かめると、板塀に囲まれた狭い空き地しかない。トムは夜を待って庭園に出かけて行くと、一人の少女に出会う。 時を超えたリアルな感覚は、作者が育った家をモデルにした、自然や背景の描写のみずみずしさによるところが大きい。代表的タイム・ファンタジー。カーネギー賞を受賞した。
『二分間の冒険』 
岡田淳作 偕成社
 小学校六年生の悟は、見えないとげを抜いたお礼として、黒猫から「二分間」の特別な時間をもらった。彼はその時間のもう一つの世界で、竜と戦う旅に出るが、途中手に入れた「竜を倒す剣」には恐るべき罠が仕掛けられていた。 長年、教師をしながら創作をしてきた作者は、ごく普通の子どもたちが活躍する親しみやすいファンタジーを得意としている。強烈なヒーローではなく、仲間が助け合い、ときに対立する物語は、小学校の中学年以上の子どもに人気が高い。
『砂の妖精』 
イーディス・ネズビット・ブラント作 石井桃子訳 福音館書店
 四人の子どもたちが引っ越し先で、砂を掘って遊んでいると、中から現れたのは、カタツムリのように目が飛び出した奇妙な生き物。それは、願いをかなえてくれる素晴らしい力を持つ妖精サミアドだった。だが、残念ながら願いは日が沈むまでしか続かない。子どもたちは、さっそく「花のように美しくなりたい」「お金が欲しい」などと次々にお願いをするが、なぜかもめ事に巻き込まれてしまう。 作者は1858年ロンドン生まれ。日常の中にファンタジーの世界が現れるエブリディー・マジックと呼ばれるジャンルの先駆者で、リアルな子どもたちの描写やユーモアあふれる展開は、今読んでも新しい。
『クラバート』 
オトフリート・プロイスラー作 中村浩三訳 偕成社
 浮浪生活を送っていた少年クラバートが、奇妙な夢の声に呼ばれてたどり着いたのは水車場。そこには親方と十一人の職人たちが働いていた。クラバートは見習いとなるが、そこは魔法学校というもう一つの顔を持っていた。魔法が与えてくれる力に魅了されるが、毎年、職人仲間の一人の命が、その代償となっていることを知り、親方との対決を決意する。クラバートは、愛する少女と共に立ち向かう。 東ドイツのラウジッツ地方の伝説をもとに、作者が十一年もの年月をかけて描いた壮大な物語。
『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』 
斉藤惇夫作 岩波書店
 イタチに襲われ、絶滅の危機に瀕している島ネズミたちを助けに、ドブネズミのガンバと仲間たちは夢見が島へ渡った。ガンバをはじめ、マンプク、イダテン、イカサマ、ガクシャなど個性的なネズミたちは知恵を出し合い命がけの戦いを挑むが、イタチ一族を統率する白イタチのノロイは、不思議な歌で、ガンバたちを操ろうとする。絶体絶命の危機の中、ガンバはオオミズナギドリへの救援を求めて旅立ち、ついに、最後の決戦の時を迎える。 島と海を舞台に繰り広げられる、痛快な冒険物語。
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