浦安市立図書館

ベストセラーってなんだ?

 その本を「読みたい!」と思うとき、そのきっかけは何でしょうか。人に勧められて、新聞・雑誌・他の本を読んで、テレビで見て、インターネットでみつけて、書店で見かけて…、と様々なケースがあるでしょう。そしてその本が集中的に積み重なり、結果、面白かったかどうかはさておき「ベストセラー」が生まれる…。ブームで終わるものもあれば、読み継がれてロングセラーとなるものもある。

図書館もベストセラーに無関係ではありません。やはり売れる本は「借りたい」人が多いのです。購入については複数冊買うことを含めて、収集・提供・保存を考慮しなければならない悩ましい問題でもあり、数年前には作家の団体と図書館界で論争もありました。

『百年の誤読』(2004年 ぴあ刊)という20世紀のベストセラーを読み直すという内容の本がありますが、今回の展示は50年間のベストセラーを紹介し、その背景に何があったのか、ベストセラーはどうやって生み出されるのか、ベストセラーとは何なのかを探ります。

つくる−要求を読む、企画する

 今、売れている本は何だろうか。文芸書はいつの時代もベストセラーが生まれる。近年、時代小説は特に人気があるが、異なる分野から転身した作家によるものなど、内容も広がりを見せ、文庫を中心に売れ続けている。ビジネス書や生き方についての本はハウツー的なもの、体験的なものが中心となって売れ、理論に行き詰った先に人々が求める、「精神世界」に関する本も多くなっている。また実話やフィクションにも「素直な感動」が求められるのが多くなっている。早く読める、気負わずに読める…現実社会に疲れる人々の姿が見え、あらためてベストセラーは社会現象と不可分であると感じる。

 社会現象は内容だけに影響力があるわけではない。作品公開がインターネット(ブログ等)や携帯電話が先行したベストセラーもある。本をつくるのは作家と出版社だけではない。一般市民がはじめは作品という意識がないまま発表して人気となったブログなどが本になり、作品を求める広告を打つ出版社は珍しくなくなっている。また出版社ではなく、海外では一般的な「出版エージェント」が日本にも現れてきている。売れる本をつくって出版社に売り込むのが彼らの仕事である。作家はエージェントに売り込むという方法もあるのだ。

 そして、魅力的なタイトル、あおり文句の入った帯、目を引く装丁、気負わないサイズと価格、期待を高めるレイアウトが加えられ、1冊の本がベストセラーへの道を歩み出す。


売る−しかける

 その本を読みたいと思うきっかけは、何かの「しかけ」に惹かれた結果でもある。もちろん、本の企画そのものも「しかけ」であるが、それ以外にも、出版の営業、取次ぎ、書店(ネット書店も含む)が「しかけ」てくる。

 出版社の営業は書店等に売り込むほか、様々な広告を打ち、メディアへの露出を画策する。例えば、新聞広告、電車のつり広告やドアに貼られたステッカー、テレビコマーシャル…。

 書店は単に並べるだけではない。ベストセラーは平置き台等の目立つ場所に積み上げられ、ポップと呼ばれる書店員手製のPR札や版元から送られる販売促進の広告が立つ。現物を手に取れることが書店の強みであり、インパクトの強い装丁は書店からヒットが出る。また、書店員が投票する「本屋大賞」も、文学賞等に負けないベストセラーの宝庫である。


書評と口コミ−メディアと社会現象

 売る側が意図した場合もそうでない場合も、メディアミックスの効果は大きい。作者がメディアに露出(あまり出過ぎると逆効果)する、第三者がメディア上で勧める(人物あるいは番組・ブログ等の人気度・知名度が高いと効果は大きい)、書評(新聞・雑誌・テレビ・インターネット上)に載る…。個人が勧める口コミもインターネット時代には大きな宣伝につながる。

 メディアミックスの分かりやすい例はドラマ化・映画化だろう。作品が既にベストセラーであれば広告は打ちやすい。また相乗効果を狙った角川映画のような例もある。

 社会現象となって売れるのか、売れて社会現象となるのか。例えば「国家の品格」「清貧の思想」「鈍感力」「世界の中心で愛を叫ぶ」といった、タイトルやテーマ、インパクトのある言葉が社会に広まる。あるいは、「負け犬」「バカの壁」「超整理術」といった本が影響を及ぼしている現象をメディアがとりあげることもある。


ベストセラーとロングセラー

 ベストセラーはブームに乗って短期販売するものが中心ではあるが、じわじわ口コミ等で広げて長く売り、ピークにベストセラーとなるものもある。とにかく「売れる」ことが大事であり、長く読み継がれて売れていけば、それは「ロングセラー」という名著になっていく。

 さて、あなたにはどんなベストセラーの記憶がありますか?


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