子どもの遊び
『こどものカレンダー』(全12巻)
加古里子 偕成社 1993
お正月、初夢、七草などの行事・風習から、凧や竹馬の作り方、その日に生まれた有名な児童文学作家や芸術家など1日ごとに紹介している。単なる記念日の本に留まらず、遊びや創作のうたなどを含め、子どもの生活に即した題材の取り上げ方が秀逸。なかなか資料がみつからない「いろはがるた」も、1月のまきに載っている。また、紙など身近なものを使った工作遊びや、手遊び・言葉遊びが数多く掲載されているのも加古らしい。
『日本の子どもの遊び』(上・下)
加古里子 青木書店 1979
日本の子どもたちの生活から遊びが消えていっていることに抗して、加古がそれまでの考察や研究をまとめたもの。上巻で子どもの伝承遊びを類型化し、それぞれの遊びの特性や子どもの成長に与える影響を述べる。下巻ではそれを踏まえた深い考察と共に、大人が介在する遊びと子どもの遊びとの本質的な違いが語られる。
子どもにとっての「遊び」を理解していくにつれ、子ども社会がそれを失うことの大きさを知る。1979年に加古が警鐘を鳴らした問題は、現代社会に深く根を下ろしている。
『絵かき遊び考』伝承遊び考(Ⅰ)
加古里子 小峰書店 2006
全国の子どもたちが歌い継いできた「絵かき歌」十万点以上を収録。加古の50年以上に渡る研究の集大成である。私たちにもおなじみの「へのへのもへじ」や、「コックさん」が地域や時代によって整理、分類されて分析される様は圧巻。路上で遊ぶ子どもたちのどんな姿も見逃すまいとする、著者の子どもへの愛情と、それを科学者の目で分析研究しようとする熱情とが結びついてこその偉業であろう。この絵かき歌を歌っていた子どもたちはどこへいってしまったのか。変貌する子ども世界を見つめ直す上でも教えられるところは多い。
『だるまちゃんとてんぐちゃん』
加古里子 福音館書店 1967
だるまちゃんはてんぐちゃんの持っている団扇や帽子がうらやましくてたまらない。大きなだるまどんが似たようなものを出してくれるが、どれも気にいらず、ふといいことを思いつく。 郷土玩具である「だるま」を主人公にした加古の代表作「だるまちゃん絵本」の第1作目。個性的で泥くさいが、なんとも楽しいその世界を、今も懐かしく覚えている方も多いのではないだろうか。だるまちゃんの愉快な発想は、子どもの視点で「遊び」をとらえ続けた著者ならではのものである。
『どろぼうがっこう』
加古里子 偕成社 1973
加古の絵本作家としての経歴のスタートに、紙芝居は重要な位置を占めている。地域の子どもたちを相手に紙芝居を創作、上演することで、子どもを物語にひきつける手法を身につけていった。初期のそれらの紙芝居の中から、絵本に発展したのがこの1冊。くまさかとらえもん先生と、どろぼうの勉強にはげむかわいい(?)生徒たちが、刑務所にどろぼうに入ったあげく、一網打尽にお縄になるという落語調のドタバタ劇は、いまでも子どもたちに大人気である。